中部デザイン協会 デザインの仕事場におじゃまします

第2回 プロダクトデザイナー 江藤太郎氏


奥様制作のタペストリー2点



  マンションや団地が建ち並ぶ住宅地の一角に建つ二階建てのシンプルな建物が、プロダクトデザイナー江藤太郎氏の事務所です。周囲と雰囲気を異にしながらも不思議と違和感なく溶け込んでいることに、住む人の人柄がしのばれます。 江藤氏は工業デザイナーとして、ミノルタ(株)の開発部門・OA機器デザイン開発に従事し、約10年間勤めた後1988年に独立。(有)造デザインアソシエイツを設立しました。独立の理由は、もっと多種多彩の仕事がしたい、自分の力を試したいという もの。その思いは、さまざまなコンペに出品することで発揮され、結果、多治見国際コンペ金賞をはじめ、ID・クラフト・照明・雑貨他、多彩な分野で多くの賞を手にし、実力とご自身の世界観を高く評価されるようになりました。

それぞれの立場を理解し、幅広い知識が必要

 生活用品、陶器、OA機器等幅広く手がけていますが、モノによっては人間工学に基づいた調査、分析も必要になります。たとえば、ハンドスキャナーをデザインした時は、数多くの人の手のサイズを調べ、また使う環境等も考慮してデザインしたとか。結果、機能性、合理性、美しさ等を備えたまったく新しいデザインになり、非常に好評でした。江藤氏はどんな仕事も楽しいと言います。「私の場合、すべてを任せてもらい、アイデア出しから企画、調査、デザインと、トータルにプロデユースするんです。自分の発想や思いが表現できるので、やりがいがあります。もちろんそのためには、エンジニア、営業、経営者のそれぞれの立場で考える幅広い知識も必要なんです」。

人の意識の変化がカタチを変える

 「新しい技術や情報は新聞、雑誌等で得られますが、最も大切にしていることは、人の意識の変化です。人の意識が変わるとモノのカタチが変わるんです」と、江藤氏は言います。たとえばかつて8ミリ映写機からビデオに変わり、そして今ではデジカメが主流。機能はもとより形もコンパクトになっています。人の意識と行動が変わるとカタチが変化する一例です。人が使うモノをデザインするには、人の行動を考えることが大切なんですね。

秩序と調和、そして思いやりが大切

 デザインする上で一番心がけていることは「秩序と調和」。それは、対象が素材であったり、使う環境だったりしますが、どんな場合でも秩序と調和が欠けると品格がなくなるからです。それに加味して、複雑なものを簡単にする、使い易くすることを大事にしているといいます。そんな江藤氏が今、若い人に言いたいことは、「人の心を知ること」。単にデザインするのでなく、使う人の立場や人への思いやりが基本となってできたデザインが本当にいいデザインなのです。
思いやりや温もりは見えないだけに、作り手の人間性が求められます。「人を知らないとデザインはできない」。それは他人はもちろん、まず自分自身の人間性を高めることが大切なんですね。


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